みなさん、こんにちは。スーパーマーケット鮮魚部の荒利改善を専門のとするコンサルタントのうおみしゅんです。
今回は鮮魚部門の荒利が上がらない隠れた原因を40の事例を見ながら探っていこうと思います。
こんなところに問題があったのか!と思わぬ発見もあるかもしれないのでぜひ最後までご覧になっていってください。
それでは本題に入ります。
多くのスーパー経営者や幹部の方々とお話しする中で、最も多く耳にするのが 「鮮魚部門の荒利がどうしても安定しない」 という悩みです。
バイヤーを問い詰め、店長を叱咤激励し、現場に「ロスを減らせ」「荒利率を上げろ」と指示を出しているのにもかかわらず、なぜか数字が改善しない。それどころか、気づけば部門全体の売上までジワジワと落ち込んでいる……。
もしあなたのお店が今、このような状況にあるなら、非常に危険な「負のループ」に陥っている可能性が高いと言えます。脅かすわけではないですが、みなさんが知らないところで日々利益が垂れ流しになっているかもしれないのです。外側からわからない営業数値以外の預かり知れないところで何かが起きているのかもしれません。今回はその要因を洗い出して白日の元に晒したいと思います。
まず、前提となりますが、実は、鮮魚部門の荒利管理は、売上高の改善よりもはるかに単純で、ほぼ100%コントロール可能なものと考えます。なぜなら、売上は競合の出店や天候などの「客観的要因」に左右されますが、荒利は組織の「仕組み」と「意識知恵」で確実に改善できるからです。
では、なぜ多くの企業で改善しないのか?
今回は、経営者や幹部がデスクの上だけのデータ分析では決して気づけない、「鮮魚部門の利益が現場から垂れ流しになる根本原因」と「経営陣が今すぐ打つべき対策」について、この動画で分かりやすく解説する形で解き明かしていきます。
1. 経営陣店長の発言が現場を狂わせる「荒利率の呪縛」
まず、経営陣、店長が最も陥りやすい間違いからお話しします。それは、現場に対して「荒利率(%)」や「ロス率」ばかりを厳しく追及してしまうことです。とにかく口癖のようにロス出すな!利益を上げろ!と具体的なアドバイスもなく指示するアレです。
チェーンストアを経営する上で、規模の異なる店舗を比較するために「率」を見るのは確かに効率いいです。しかし、現場のチーフや担当者がこの「率」のクリアばかりを意識し始めると、売場では何が起こるでしょうか?
現場にとって「ロス率を下げ、荒利率を手っ取り早く上げる最強の手段」は、商品を売場に出さないこと、並べないことです。人間は弱いもので日々詰められ続けると辛い環境から逃げ出したい一心で目先の数字だけを取り繕うとするものです。
売場に品物を並べなければ、当然ロスは出ません。一時的に部門の荒利率は跳ね上がり、見かけの数字は良くなります。店長に褒められ、チーフも「怒られずに済んだ」と安心するでしょう。
しかし、言うまでもなく、その売場は2〜3ヶ月後に急激な売上ダウンを迎えます。「いつ行っても欲しい魚、商品がない店」にお客さんが見切りをつけるからです。
売上が下がれば、結果として会社に残る「荒利高(金額)」も削られます。目先のパーセンテージに囚われたサラリーマン気質のマネジメントが、企業の原動力である売場を自ら殺してしまう。これが、全国のスーパーで多発している「利益低下の真犯人」です。
私たちが追求すべき最終目的は、率ではなく「荒利高(手元に残る現金)」のはずです。「売上の中にこそ荒利がある」という大原則を、まずは経営陣が再認識しなければなりません。
2. 「答えはすべて現場にあり」指揮系統の怠慢を疑え
利益が出ないとき、多くの経営者は「現場の技術が未熟だから」「チーフの意識が低いから」と考えがちです。
しかし、本当の答えは本社のPC画面にはありません。すべては日々の「売場とバックヤード」に隠されています。
答えはすべて現場・売場にあり
厳しい言い方をすれば、「指揮系統(経営陣・幹部・バイヤー)が現場のリアルな課題を見ようとしないから、利益が取れない」のです。
鮮魚の荒利は、コップの水と同じです。どこからか水が溢れて(利益が漏れて)いるから、無駄が出ている。であれば、コップを大きくするか、注ぐ水を止める(製造量・仕入を調整する)という仕組みを作ればいいだけです。非常に単純な構造です。
経営者や幹部が売場に足を運んだ際、どこをチェックすれば「漏れている利益」を特定できるのか。現場で実際に起きている要因を5つの経営リスクに分類して可視化しました。
3. 経営陣が売場でチェックすべき「利益漏洩」の構造的要因
ただ「売場が綺麗か」を見るだけでは、垂れ流される荒利を止めることはできません。幹部が店舗巡回をする際、以下のリアルな問題が放置されていないか徹底的に監査してください。
①【値付け・価格コントロールのリスク】
■ 単純なプライスカード・ラベルのミス:580円の商品のラベルを、うっかり58円で発行して売場に出してしまうような致命的ミス。
■ バイヤーの部門登録間違いの放置:新商品やスポット商品のコードが、別の部門(惣菜や精肉など)で登録されており、いくら売っても鮮魚の売上・荒利にカウントされないケース。
■ 特売・バンドル販売の垂れ流し:特売期間が終わっているのに通常価格に戻し忘れる、原価を無視した「3パック1,000円」を刺身等で連発して自ら利益を削る。
■ 高すぎる価格設定による自滅:過剰に欲張った売価をつけた結果、夕方まで全く売れず、大量の値引きや廃棄を発生させる。
■ メーカー値上げへの転嫁漏れ:仕入原価が上がった定番商品について、売価変更の手続きを忘れて長期間据え置いている。
■ 相場高騰時の売価変更遅れ:市場の相場が上がって仕入原価が高くなった際、競合を恐れて適正な売価改定に踏み切れない。
■ 入数・規格の勘違いによる値付けミス:伝票の見間違いや、パック内尾数のカウント違いによる計算違い。
②【現場の技術・オペレーションのリスク】
■ 歩留まり(ぶどまり)の悪さ:大物魚や三枚おろしなどのおろし方が下手で、骨に身が多く残ったまま捨てられている。
■ 過剰なトリミング:血合いや皮、小骨を取る際に、神経質になりすぎて食べられる身まで必要以上に削り落としている。
■ 規格の間違いによる過剰サービス:本来「4切」のパックに間違えて「5切」入れてしまい、継続的に安く売ってしまう。
■ 商品化クオリティの低さによる機会損失:盛り付けや切り方が下手で、ドリップが溢れているため、お客さんに選ばれず売れ残る。
■ 付加価値の提案不足:技術不足で「厚切り」や「上盛り合わせ」といった高値入・高単価の提案ができず、安い定番品ばかり作っている。
■ パック・ラップの技術不足:ラップがシワシワで見栄えが悪い、トレイの底が濡れて湿っているため、商品価値が落ちて値引きに回る。
■ 夕方の見切り・値引きタイミングの失念:適切な時間に見切りを行わず放置し、ピークタイムを逃して最終的に100%廃棄へ追い込む。
③【伝票処理・会計(システム)のリスク】
■ 現物がない「架空伝票」の計上:伝票には載っているのに、実際の入荷がバックヤードにないことに気づかずサインしている。
■ 同一納品物の二重計上:同じ仕入れに対して2枚の伝票が処理され、帳簿上の原価が倍に膨らんでいる。
■ 値引き伝票(赤伝)の処理漏れ:取引先からの補償や相場値引きの伝票処理を手落ちで忘れている。
■ 経費伝票の起票忘れ:消耗品や資材などの処理ミス。現場で非常に多いパターンです。
■ レジの打ち間違い(他部門への流出):レジでのプリセットキーの押し間違いや、手打ち時の部門間違いで、惣菜等に売上が流れている。
■ 棚卸(たなおろし)時のカウント漏れ:バックヤードの奥や冷凍庫の商品のカウント漏れにより、帳簿上のロスが大きく出る。
■ 在庫の過少計上・過大計上:月末のカウント時に単位(ケースとパックなど)を間違え、当月または翌月の原価が狂う。
④【設備・環境管理のリスク】
■ 売場ショーケースの温度異常:設定温度の狂いや故障に気づかず、商品をまとめて廃棄せざるを得なくなる。
■ バックヤード冷蔵・冷凍庫の冷え不良:一時保管中にドリップが出たり色変わりしたりして、定価で売れなくなる。
■ 作業中の破損ロス:高級なウニのパックや刺身盛り合わせを落としたり、パックを潰したりしてしまう。
■ 子供や客によるいたずら被害:売場のパックのラップに指で穴を開けられ、毎日のように商品化し直しが発生している。
■ 定休日前・改装前の叩き売り:過剰な在庫を残した結果、売り尽くしのために極端な値引きをして荒利をすべて飛ばす。
⑤【組織モラル・マインドのリスク(最大の盲点)】
■ 現場のサラリーマン化・事なかれ主義:「売れて忙しくなるのは面倒だから、そこそこの発注と製造で終わらせよう」という空気が蔓延している。
■ チーフとパート・アルバイトの指示不徹底:「今日はこれを売り切る」というチーフの意思が伝わっておらず、売場で作業がバラバラに進む。
■ 廃棄商品のずさんな管理:廃棄するものの数を正しくカウントせず処理が適当なため、何が原因で損が出ているのか誰もわからない。
■ 従業員のモチベーション低下:経営陣やオーナーへの不信感(ボーナスカットの一方でオーナーが高級車を乗り回すなど)から現場が会社に利益を残す意欲を失っている。
■ 身内・仲間内への不当値引き:店舗自体のモラルハザードによる、身内への意図的な値引きシールの貼付。
■ 商品の不正な横流し(内引き):残念ながら存在します。荒利が24%を恒常的に割り始めたら、バックヤードの管理体制を監査する必要があります。
4. 経営者が今すぐ徹底すべき「売買差益管理」の仕組み
これら無数の原因を一つひとつ叩き潰すために、経営陣が現場に命じるべき唯一の対策。それが**「売買差益管理の徹底」**です。
これは大きな会社ではシステムで構築済みで不要かもしれませんが、中小のスーパーにとっては利益管理の要になる基礎です。
この売買差益管理ができてないところが結局利益を確保できてないのです。
売買差益管理とは、いわば「自社部門のリアルタイムな健康診断」です。仕入れが過剰ならその場でストップをかけ、ロスが多いならその週の製造量を調整する。これを当月中に、PDCAとして高速で回す仕組みを作ることです。
そのためには、本部がただ月末の確定数値を待つのではなく、現場に対して「中間棚卸」を指示するなどして、常に正確な荒利状況を可視化させる必要があります。
働き方改革や残業時間の問題もあり、二の足を用いる企業も多いですが、数字が悪い時こそ、このインフラ投資(仕組みづくり)にリソースを割くべきです。早く原因を突き止め、その月のうちに現場で解決する。このサイクルをつくる以外に、根本的な改善ルートはありません。
まとめ:利益を残せる組織に変革するために
鮮魚部門の荒利悪化は、決して現場のチーフ一人の責任ではありません。その背景には、評価基準の歪みや、現場の「漏れ」に気づけない組織の構造的な問題が横たわっています。
まずは「何が原因で利益が逃げているのか」を経営者自身が正しく把握すること。そして、現場が自発的に数字をコントロールしたくなるような、正しい評価と差益管理の仕組みを提供すること。それこそが、トップマネジメントの役割です。
本サイト(Uo-X)では、単なる精神論ではなく、数字と仕組みで水産部門の利益を最大化するための具体的なコンサルティング手法や、実践的な計数管理のノウハウを今後も発信していきます。目先の数字に一喜一憂するのをやめ、利益が残り続ける強い組織への変革を、今すぐ始めましょう。
<終わり>

